最近のブラジル市場下落の背景:外部要因と国内要因

外部要因:米国金利の上昇



2018年初来でみた新興国通貨は、米ドル高の影響で総じて軟調に推移しています(ブラジルレアルは対米ドルで約11%下落)。


その背景には米国金利の上昇が挙げられます。賃金上昇、原油高などを起因とするインフレ懸念から、米国10年国債利回りは年初来上昇が続き、金利差縮小の思惑から米ドル高・新興国通貨安が進行しました。米中通商摩擦、米朝会談の不透明感も重石となりました。

主な新興国通貨の為替動向(2018年初来~5月29日の騰落率、対米ドル)

米国10年国債利回り(2017年5月29日~2018年5月29日)

出所:ブルームバーグのデータをもとにHSBC投信が作成

一方、足元では、原油価格が下落し始めたことや、直近の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨で米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げにやや慎重な姿勢を示していると受け止められたことから、米国10年国債利回りは5月17日の3.1%をピークに低下に転じました(5月29日は2.7%台)。


今後、米国金利上昇という外部要因が剥落すれば、ブラジルレアルを含む新興国通貨への下落圧力は低減すると考えます。

国内要因①:トラック運転手のストライキ



最近の原油価格高騰の余波はブラジルにおける燃料価格上昇につながり、政府による燃料補助金の削減と相まって、5月21日から全国規模のトラック運転手のストに発展しました。


高速道路で抗議を続けるトラック運転手の排除に軍隊が出動する事態となり、物流の麻痺、ガソリンスタンドの閉鎖による燃料不足から企業、学校、小売りチェーンなどの一時的な事業閉鎖など、ブラジル経済が混乱し、通貨の下落に繋がりました。


物流の麻痺により食品価格の上昇が予想され、低位安定で推移しているブラジルのインフレ率の上昇に繋がるとの思惑も働きました。


加えて、事態収拾のため政府が決定したディーゼル価格の10%引き下げも嫌気されました。この決定により、国営石油会社ペトロブラスは、収益圧迫懸念とともに、政府からの同社の独立性に対する疑問も広がり、同社の株価は大幅に下落し(5月28日に前営業日比-14.6%)、ブラジル株式および通貨の下落へと影響が広がりました。


5月30日にはブラジル石油産業労働組合によるストライキも予定されており、まだ不透明感は拭えないものの、発端となったトラック運転手のストライキは収束に向かっており、ブラジル中央銀行のゴールドファイン総裁は、トラック運転手のストライキが物価に与える影響は一時的なもので、金融政策に影響が及ぶ可能性は低いとの見方を示しました。

国内要因②:大統領選挙



もう一つの国内要因は本年10月に実施予定の大統領選挙を巡る不透明感です。


主義・主張の異なる複数の候補者が想定されますが、これまで現職のテメル大統領が推し進めてきた各種構造改革が継続されるかが市場の注目を集めています。


DataFolhaが本年4月に実施した世論調査によると支持率は、ボルソナロ氏(右派、社会自由党:PSL)、シルバ氏(中道左派、ブラジル社会党:PSB)、ゴメス氏(中道左派、民主労働党:PDT)、アルキミン氏(中道右派、ブラジル社会民主党:PSDB)の順となっています。


右派のボルソナロ氏、中道左派のシルバ氏、ゴメス氏が勝利した場合には、改革が停滞し、さらなるブラジルレアル安に繋がる可能性もあります。しかしながら、現在、支持者未定者が多数存在し、なおボルソナロ氏、シルバ氏が不動の支持を得ている訳ではありません。


また、市場関係者の多くは、第1回目の投票で誰も50%以上の票を獲得できないものの、改革を支持する中道右派の組織票によるアルキミン氏の決選投票での勝利を予想しています。


アルキミン氏が勝利した場合には、改革の強力な推進が確認され、ブラジルレアルにポジティブに働くことが見込まれます。

依然、経済ファンダメンタルズは堅調



前述のような外部要因、国内要因の影響でブラジルの投資環境は、足元は厳しいものの、ブラジル経済は著しく改善しています。

実質GDP成長率(2016年~2019年)

※2018年、2019年はブラジル中央銀行集計による現地市場関係者の予想(2018年5月25日時点)
出所:データストリーム、ブラジル中央銀行のデータをもとにHSBC投信が作成

また、景気の拡大により、消費者・企業ともに景況感は改善、さらに資源価格の上昇もあり貿易収支は大幅な黒字を計上しています。

消費者と企業の景況感(2010年1月~2018年5月)

出所:データストリームのデータをもとにHSBC投信が作成

貿易収支(2008年1月~2018年4月、12ヶ月移動平均)

出所:データストリームのデータをもとにHSBC投信が作成

このように、経済ファンダメンタルズは依然堅調に推移しており、足元のマイナス要因が払拭されれば、再びブラジルの投資環境は改善することが期待できます。

当社の見方



ブラジル株式
ブラジル株式市場は、景気拡大を背景に年初から底堅く推移していたものの、5月21日から始まったトラック運転手による全国規模のストライキの影響から下落、特にディーゼル価格の引き下げが嫌気されたペトロブラスが大幅安となりました。


政府はディーゼル価格引き下げ後、凍結に踏み切り、一連の対策を発表しストライキの鎮静化を図ったことで、5月29日のペトロブラスの株価は14%強の大幅反発となりました。


ストライキの鎮静化が進行するにつれ、投資家の注目は再び健全な経済ファンダメンタルズに向かうことが期待されます。また、ブラジル株式市場は、引き続き企業収益の伸びが上昇を牽引すると見ています。


ブラジル債券
ブラジルのトラック運転手によるストライキの影響は、金融政策に対しては限定的と思われます。


ブラジル中央銀行は5月の会合で、市場の大方の利下げ予想に反し、政策金利を据え置きました。声明では、利下げ見送りの背景として、新興国市場へのリスク選好度が低下している点を挙げています。年内は政策金利は据え置かれる可能性が高いと当社は見ています。


ブラジル債券は相対的に高い利回り水準に妙味があることに加え、引き続きインフレ率の低位安定が債券市場を下支えすると見ています。

ブラジルボベスパ指数の推移(2017年5月29日~2018年5月29日)

出所:ブルームバーグのデータをもとにHSBC投信が作成

ブラジルレアル(対米ドル)とブラジル10年国債利回りの推移(2017年5月29日~2018年5月29日)

出所:ブルームバーグのデータをもとにHSBC投信が作成

出所:ブルームバーグのデータをもとにHSBC投信が作成

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