インド市場を見る眼(2018年11月2日)

トピックス:インド政府、ノンバンクのデフォルト(債務不履行)を受けて、金融システムの保護に乗り出す



インド政府は、国内インフラ開発・金融大手の一社について、デフォルト(債務不履行)に陥ったことを理由に、経営陣を入れ替えると発表した。大手ノンバンク金融事業会社(NBFC)の経営破綻が他のノンバンクや金融機関の信用不安を高めることが懸念され始めたため、政府は異例の経営介入に踏み切った。同社はこれまでインド準備銀行(中央銀行)によって「システム上重要な」機関として位置づけられてきた。
同社は過去30年間、インドの主要インフラ・プロジェクトに融資を行ってきた。経営多角化でプロジェクト開発にも乗り出したことから、その累積債務は125億ドル相当に膨らんだと言われる。中央銀行は2018年6月に政策金利を4年5ヶ月ぶりに引き上げ、さらに8月に追加利上げを行った。その結果同社は債務の元利払いが滞る事態に追い込まれた。
デフォルトを受けて同社及び子会社の信用格付けが相次いで引き下げられたことから、ノンバンク部門全体に信用リスクが波及することへの懸念が高まった。さらに、同社がインフラ・プロジェクトへの融資や支援を継続できなくなれば、インドのインフラ開発全体に影響が及ぶという不安も広がった。
インドの格付け会社ICRAは、9月に当該ノンバンクが短期、長期の負債について期限までに元利の支払いを履行できなかったため、格付けを「デフォルト」と判定した。
政府が介入する前に、同社は債務返済資金を確保するために社債の発行、借入上限の引き上げ、株主割当増資について株主から承認を取り付けた。

同社の経営陣刷新後、政府はインフラ関連金融機関によるデフォルトの連鎖を防ぐ方針を表明するとともに、重大不正捜査局(SFIO)に捜査を命じた。新取締役会には国内大手銀行の首脳(複数)を含む6人が選任され、経営再建に向けた資産売却が既に進められている。
インド政府の民間企業への介入は異例のことであり、今回はほぼ想定外の出来事であった。政府による民間企業への介入は、2009年に国内IT業界4位(当時)の会社による粉飾決済が発覚した時以来である。

信用不安拡大を回避すべく政府が介入

ノンバンク各社は、中央銀行の利上げによる資金調達コストの上昇に直面していたため、政府の介入が発表されるとノンバンクの株価は数日にわたり軒並み下落した。
当該ノンバンクへの政府介入後、中央銀行はノンバンク部門に対し資産・負債のミスマッチによるデフォルト・リスクを回避するために規制を強化すると発表した。中央銀行は、ノンバンクの自己資本比率、利害関係者間取引、資産・負債のミスマッチに関する規制を強化すると見られる。
インドのノンバンク規制は2008年の金融危機以降、見直されてきた。例えば、中央銀行はプルデンシャル(健全性)基準を強化し、Tier1資本比率の最低要件を(7%から段階的に引き上げて)10%とした。
ノンバンク規制強化の見通しは、ノンバンク業界全体で資金調達が困難になる中で明らかにされた。そのため規模の小さいノンバンクの場合、廃業を余儀なくされる可能性がある。

ノンバンク各社は規制強化のタイミングに懸念を表明した。それは今回の発表がインド最大の祭りであるディワリ祭と重なったからだ。毎年、この時期にはインド全体で資金の借入需要が増える傾向がある。
中央銀行は、資金不足にあるノンバンクに流動性を供給するために規制条件を緩和した。具体的には、銀行によるノンバンク及び住宅金融会社向けの融資枠に余裕を持たせた。
中央銀行は、銀行の単一の債務者への融資上限を資本金の10%から15%へと拡大した。ただし、この融資上限の引き上げはノンバンクによるインフラ関連融資には適用されない。また、中央銀行は銀行に対して別のインセンティブも用意した。それは、金融会社向けに追加融資を行う銀行に限り、流動性カバレッジ比率(LCR)の計算に保有する国債残高の一部を適格資産として参入することを認めるというものだ。
インドでは銀行が金融市場における主要な貸し手であることに変わりはないものの、ノンバンク(及び住宅金融会社)の重要性が増している。ノンバンク部門のバランスシートは銀行部門の5分の1以下と推定される。
当該ノンバンクのデフォルトを受けて、金融市場ではノンバンク各社の流動性不足への懸念が高まった。しかし当社では、ノンバンクの中でも、リテール事業に特化している会社、差別化戦略を取り、景気サイクルのいかなる局面にも対応可能なビジネスモデルを確立している会社、効率的な資産・負債管理(ALM)で定評がある会社は今回の難局を乗り切れると見ている。

マーケットサマリー


株式市場

株式市場は9月以降、売り優勢の展開
インド株式市場は9月以降、下落傾向にある(10月26日現在)。原油価格の上昇(インドは石油の国内需要の8割程度を輸入に依存)に加え、新興国市場全般に対する投資家センチメントの悪化がインド株市場に悪影響を及ぼしている。

図表1 SENSEX指数の推移(2015年1月1日~2018年10月26日)

出所:データストリームのデータをもとにHSBC投信が作成

当社の株式運用戦略
当社ではインド株式市場に対する強気な見方を維持している。インド経済は着実に成長しており、モディ政権による構造改革の進展から、成長率はさらに上振れると見られている。また、景気拡大に伴い企業収益が改善しており、株式市場を取り巻く環境は良好と考えられる。インド株式の運用では、持続的な収益性を有しながらバリュエーションに割安感のある銘柄を選別。業種別には金融、一般消費財をオーバーウェイトとし、エネルギー、生活必需品、ヘルスケアをアンダーウェイトにしている。

債券市場

9月下旬以降は上昇(利回り低下)
インド国債市場は、9月半ばまでは下落(利回りは上昇)したが、その後、上昇(利回りは低下)に転じた(10月26日現在)。
インド準備銀行(中央銀行)は10月5日の金融政策決定会合で、市場の利上げ予想に反して、政策金利を6.5%に据え置いた。しかしながら、金融政策のスタンスを「中立」から「調整された引き締め」へと変更しており、今後、インフレ圧力が高まれば、追加利上げを行うことを示唆している。中央銀行は引き続きインフレ抑制を最優先とする姿勢を堅持することが見込まれる。

図表2 10年物国債利回り推移(2015年1月1日~2018年10月26日)

出所:データストリームのデータをもとにHSBC投信が作成

当社の債券運用戦略
インド国債は投資適格級ながら、利回りは8%程度と高水準にある。また、インフレ率は比較的安定的に推移する見通しであり、インド国債は引き続き良好な投資対象と見ている。
インド債券の運用においては、引き続き流動性の高い残存期間5年から10年の国債の組入れを高めに維持。また流動性の高いルピー建て社債も魅力がある。

為替市場

インドルピーは引き続き弱含みの展開
インドルピーは9月以降も、対米ドル、対円で弱含みの展開となっている(10月26日現在)。原油高によるインドの経常収支悪化懸念、また米中貿易摩擦を背景とした新興国通貨全般に対するセンチメントの悪化の影響がインドルピー相場の悪材料となっている。

ルピー相場は、中長期的には、インドの良好な経済ファンダメンタルズ、潤沢な外貨準備高が下支え要因になり、底堅い動きになると予想。

図表3 ルピー相場の推移(2015年1月1日~2018年10月26日)

出所:データストリームのデータをもとにHSBC投信が作成

留意点

投資信託に係わるリスクについて

投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象としており、当該資産の市場における取引価格の変動や為替の変動等により基準価額が変動し損失が生じる可能性があります。従いまして、投資元本が保証されているものではありません。投資信託は、預金または保険契約ではなく、預金保険機構または保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入の投資信託は投資者保護基金の保護の対象ではありません。購入の申込みにあたりましては「投資信託説明書(交付目論見書)」および「契約締結前交付書面(目論見書補完書面等)」を販売会社からお受け取りの上、十分にその内容をご確認頂きご自身でご判断ください。


投資信託に係わる費用について
購入時に直接ご負担いただく費用 購入時手数料 上限3.78%(税込)
換金時に直接ご負担いただく費用 信託財産留保額 上限0.5%
投資信託の保有期間中に間接的にご負担いただく費用 運用管理費用(信託報酬) 上限年2.16%(税込)
その他費用 上記以外に保有期間等に応じてご負担頂く費用があります。
「投資信託説明書(交付目論見書)」、「契約締結前交付書面(目論見書補完書面等)」等でご確認ください。

※上記に記載のリスクや費用につきましては、一般的な投資信託を想定しております。
※費用の料率につきましては、HSBC投信株式会社が運用するすべての投資信託のうち、ご負担いただくそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。
※投資信託に係るリスクや費用はそれぞれの投資信託により異なりますので、ご投資される際には、かならず「投資信託説明書(交付目論見書)」をご覧ください。