中国市場を見る眼2018年8月号

過去2~3ヶ月間にわたる人民元の値下がりのペースは極めて急速であり、2015~16年の下落局面の下落ペースを上回るものであった。しかし、人民元の最近の値下がりは急激ではあるものの、前回の下落局面に経験した市場の混乱が繰り返されることはないと当社はみている。


米ドルおよびCFETS(中国外国為替取引システム)の通貨バスケットの両方に対する人民元の急速な下落の要因としては、米ドル高、貿易摩擦への懸念、中国経済の成長モメンタム低下の兆候などが挙げられる。さらに直近の人民元の下落は、1年近い上昇局面の後に起きていることも関係しているとみられる。CFETS人民元指数(CFETSの通貨バスケットに対する人民元のレート)の推移を見ると、急落前となる6月のピークまでの1年間に7%近く上昇した後、8月23日までに5%強下落している。

図表1 急落する人民元

出所:ブルームバーグ、2018年8月

人民元の下落を巡る憶測が高まる中、中国政府当局は、通貨安を報復手段として使わないことを公約するとともに、2015~2016年に大量の資本流出を引き起こした負の連鎖の再発を回避する対策を直ちに発表した。政府の努力は効果を発揮したとみられ、新たな対策が講じられる中で、オフショア人民元(CNH)の12ヶ月フォワードポイントは反転している。

大量の資本流出の兆候はほとんどない

2015~16年に見られた資本流出と比較すると、過去2ヶ月間の流出ペースは緩やかとなっている。外貨決済および売買状況が示すように、スポット市場における国内銀行の顧客からの外貨需要は、2015年下半期~16年の期間に比べると低水準にとどまっている。但し、外貨先渡市場での外貨買い入れは当時を上回っている。中国企業は、人民元の値下がりに対して、当時よりもはるかにヘッジをかけていると見られる。


オンショアの株式および債券に対する海外投資家からの証券投資は、市場のボラティリティーにもかかわらず、好調を維持している。また、直接投資による海外からの資金流入超過額も2015~16年当時より増加しているが、これは 2017年以来中国企業による海外直接投資が規制されているためである。企業も海外に保有している米ドルを中国国内に送金してきたが、その一部はここ数四半期中に海外で外貨借入を行ったことによる送金である。


中国人民銀行(中央銀行)の保有する外貨建資産は今年は安定的に推移しており、これは中央銀行が人民元の防衛を目的とする外貨建資産の売却をスポット市場で行っていないことを示すものである。

大規模な資本流出や、中央銀行が為替介入のため外貨準備を売却している兆候は見られない

図表2 銀行の顧客向け外国為替純購入額は低水準、外貨準備高は安定推移

図表3 経常収支黒字は減少しているが、国際収支全体はなお僅かに黒字を維持

出所:ブルームバーグ、CEIC、HSBCグローバル・アセット・マネジメント(香港)リミテッド、2018年8月

中期的な人民元の見通しは?

米国による追加関税への報復手段としての大幅な人民元の切り下げや、保有する米国国債の売却は、中国経済に悪影響を及ぼす可能性があるため、依然として議題に上がっていない。


貿易摩擦がさらに深刻化した場合には、中国の輸出は減速することが予想され、また内需拡大のための金融緩和が強化される可能性があるため、結果的に輸入が増加し貿易黒字が縮小していくことが見込まれる。これは貿易/経常黒字による経済へのプラス寄与を縮小させるだけでなく、特に海外での資金調達環境がさらに厳しくなった場合には、金融・投資の資金フローを 一段と圧迫するとみられる。


中国の経常収支は2017年にはGDP比1.3%に相当する黒字だったが、18年上半期は同0.4%に相当する赤字となった。また、経常収支の悪化傾向は2016年以来続いている。これまでは直接投資の流入超過が高水準であったことが人民元の下支え要因となってきたが、経常収支が悪化しているため、人民元は資本移動、米ドル指数、主要通貨の動きに対しより敏感になるだろう。


逆に、中国と米国の間の貿易交渉が何らかの建設的な最終合意で決着した場合には、中国の貿易見通しは改善し、人民元は押し上げられる可能性がある。


また金融緩和策は、積極的な流動性の注入(最近では短期市場金利低下の要因となった)よりも信用の拡大を確実にすることに一段と重点が 置かれると見られる。2018年下半期には、一定限の量的金融緩和とより積極的な財政政策の組み合わせにより金利の低下は抑えられ、金利差が急速に縮小する状況は避けられると見られる。中国経済のモメンタムが安定化する兆候があることも投資家心理を支えるとみられる。

リスク管理策で相場の方向性が決まることはない

中央銀行は6~7月の人民元の急落を容認したが、その後は2015~16年の経験から、投資家や企業が「群衆行動」を起こす負の連鎖のリスクを管理する措置に出ている。具体的には、市中銀行が外国為替を顧客に先渡し契約で売却する際の準備金率を再度20%に引き上げた。これにより、企業が先渡し契約で外貨を購入するコストを引き上げ、人民元のショートポジションを保有するコストを高めたことになる。報道によれば、中国人民銀行(中央銀行)上海支店も、外国銀行による自由貿易勘定ユニット事業を通した人民元の借り入れを一時的に停止させている。その結果、米ドル・人民元のフォワードポイントは著しく上昇した。また中央銀行は、人民元に対するプロシクリカル(景気循環増幅的)な市場心理を抑制するために、人民元の毎日の基準値算出メカニズムに、カウンタ ーシクリカル(景気循環抑制的)調整要素を再度導入した。市場予想の管理と投機抑制を念頭に他の対策が導入される可能性もある。


資本逃避の兆候はほとんどないため、中国政府当局は比較的客観的な姿勢を維持しており、現行のマクロプルーデンス政策を変更する様子は全く見せていない。市場のパニックや大規模な資本流失が発生すれば二国間貿易交渉はさら複雑になりかねなかったが、最近の対応はそのリスクの抑制に役立っていると当社では考えている。ただし積極的な為替介入は行われないとみられる。これは中国がより長期的に経済の開放政策の継続と資本市場の自由化を目指し、また人民元の為替レート決定を主に市場原理(需要と供給)に担わせつつ、最終的には「クリーン・フロート(自由変動相場制)」に移行することを長期目標としているためである。外部環境が不安定な中で人民元の柔軟性が高まれば、金融政策の焦点を国内経済情勢や政策目標の実現に一段と絞り込むことが可能となるだろう。

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